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日々是好日

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楽器と人との出会いの瞬間。


先日、相談にやってきた中学生の女の子からの依頼で
彼女に相応しいフルートを選ぶお手伝いをしました。

まだまだしっかり音を出すことは出来ないし
管楽器を吹ける体力や楽器の構えも未熟なので
どの楽器が自分に合うのかを、自分で判断することも出来ないけれど
人から借りてる楽器で練習するより自分の楽器を持ちたいということで
私なりに自分の経験から、彼女に相応しい楽器を3本に絞り選定しました。

この3本の中から彼女が自分がいいと思う楽器を選びます。


それは本当に責任のあること。
楽器を選ぶということはある意味、楽器と「結婚」するようなものだから
もしその子の方向性や出したい音、感性に合わなければ
その子自身の能力を発揮できない楽器を与えてしまうことにもなりかねないからです。

ある程度プロになって、楽器のメーカーや素材(純銀・9金・14金etc,,,)などなど
あまたある楽器どれでも関係なく、吹く能力や楽器をコントロールする技術、その楽器の特性を瞬時に
読み取れる奏者であれば、かりに自分に合わない楽器を手にすることがあっても経験と技術で補えるけど
それがまだまだ経験の浅い、楽器を自分の体の一部として扱えない子に楽器を選ぶとなると
その子の事をよく知っている先生でも難しいことだと思います。


結局最終的には本人が楽器を選ぶわけだし、本人の直感を信じて私はある程度の意見しか言えないけれど。
この今のご時世、楽器もありとあらゆるものが世に出過ぎていて、判断は本当に難しい。
でもその沢山ある楽器の中から、私が3本選び、最終的な1本を彼女が選ぶのだから、
その子の今の状態を見つつ、これからどう成長するかも踏まえて
責任持って選び出しました。

ただ一つ言えるのは、経験者がこの楽器がいいよ!なんて言おうがなんだろうが、
本当にその子があまたある楽器の中から
「これがいい!」って心から思えたら、やっぱりそれが一番正しい。
例えその楽器が傍から見てその子にはあってないなぁとか、私だったらこの楽器は選ばないと思っても。

本人が直感でこれだ!と思い、この楽器と毎日練習して、いい音色を出したいと思うかどうかが一番大切。
人の意見は二の次でいいと思う。

私も大学時代、ボストンのへインズ社(フルートの神様、ランパルもへインズの14金を使っていた)の
フルートに出会って吹いた途端、本当にこれだ!!って思った。
それで持ち帰って大学時代の恩師に見せたら、先生は「これは難しい楽器すぎる。音質はいいけど、
音程のコントロールも難しい、しかも音量も出せない楽器だ。君には難しすぎる。」

そう言われてしまった・・・。

でも私は絶対今の私に必要な楽器はこの子だ!と思ったから
先生を説得し続け、何度も何度もレッスンに持っていき、へインズを貸してくれた
楽器屋さんにも頭下げて、「絶対先生を説き伏せてこの楽器を買うから、もう少し貸して!」と迷惑をかけ。

ようやく先生が折れてくれ、
「そんなに使いたいなら自分で責任持って使いなさいね。
でも凄く難しい楽器で、あなたは余計な苦労をするかもしれないよ。
でも僕はいうことは言ったからね。後は好きにしなさい」と。

確かに音は凄く好きだったけど、本当に音程や音量を出すのに苦労した。
でもこの楽器が好きだから、苦労とは感じなかった。
この楽器があの時の私を成長させてくれた。私が試行錯誤した結果、
あの楽器で自分があの時の自分の望める限りのことをして、音色を追求できたと思う。

そしてある時、あれだけヘインズを使う事を反対していた先生も、
「これを選んでよかったよ!あなたに合ってる。
伸び代をより大きくしてくれる楽器だ」と言ってくれた。
その時は本当に嬉しかったなぁ⭐



月日が経ち、お世話になったへインズとはお別れし、
新たなステージに進むために、6年前にブランネンの14金に変えた。
この子も私には難しい楽器で、しっかり鳴らすのに本当に沢山の修練を積んだ。
この子からは今でもまだまだ学び続けている。
自分の体の一部として扱うのは本当に難しかったけど
いまではもうすっかり私の体の一部になってくれてる。


その時その時で必要と思う楽器、自分の価値観がどう変わるかでも選び方も変わる。
でもコロコロ楽器を買い替えすぎる人は信用できない。
自分の技術の無さを楽器の所為にする人も沢山いる。


今まで出会った楽器、それぞれには深い思い出がある。
本当に楽器と人との出会いは、人と人との出会いとまったく同じだ。

楽器を初めて手にした瞬間や、音を出した瞬間のこと。
本当に綺麗な楽器だなぁ~ってため息が出るほど見惚れてしまうあの瞬間を
これからフルートを始める子たちには思う存分感じてほしい。

そして自分で手ごたえを感じる楽器を選んでほしい。
自分にとってこの人が居ると成長できると思える、必要な友達を見つけるのと同じように。

その出会いの瞬間に立ち会えたことは凄くうれしい。
私もその子を見ていて、自分の若いころを思い出した。
こうだ!と決めたら絶対譲らなかった私の若かりし姿を。

なんか色々と忘れてた感覚を思い出したり、昔の事に思いを馳せた一日で、
こんなに自分の中には大事な大事なもので溢れているんだ!ってことが本当に感じられて
嬉しかった。




楽器と人との出会いの瞬間。_f0341967_13564687.jpg






by erikok0826 | 2015-01-25 16:00 | 出来事/ひとりごと
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