小説の醍醐味。
近頃、本屋さんには読みやすい本、とっつき易い本、
また芸能人が書いた話題の本や賞を取った話題本が目につきやすい場所に陳列され、
大手の本屋はどこも変わり映えがなく、自分で本を選ぶ楽しみが少なくなるように思う。
活字離れが著しい今日、話題の本でもとっつき易い本でも
それが本へ親しむきっかけや扉になればそれも良しだけど、
やっぱり「分かりにくい本」や「難解な本」「一度読んだだけでは理解できない本」を
手にとって何度も何度も読み返す愉しみを知ってもらえたら、と思う。
パリにいたとき、私の友人が貸してくれたコロンビアの作家、
ガルシア・マルケスの『百年の孤独』ははっきり言って難解で、
ページをめくる手が止まり、私にはレベルが高すぎるのだろうかと
何度も挫折しそうになったり、読むのを辞めようかとも思ったけれど、
メモを片手に(同じ名前の登場人物が何人も出てくるので、わかんなくなる。。。)
ページを戻しては進み、また戻して読み直しては進み、ようやく読み遂げる。
それでもこの作品を一度で理解できるはずもなく、また一生かかって読み続けても
どこまで作家の本意を読みとれるか知れないが、それでも小説という面白さ、
可能性を十分に教えてくれる作品だ。時の一過性で終わることなく
こういう作品が何年も先も生き残るのかもしれない。
最近、分かりづらい本を探すのが私の趣味になりつつある。
最近読みはまっているのが、イタリアの作家、アントニオ・タブッキ。
イタリア語に留まらず、ポルトガル語、フランス語など、多くの言葉を操った。
独特の世界観をゆっくり堪能できる。
私たちの日常とはかけ離れ、価値観も文化も宗教も違う外国文学は
特に難解な部分、想像できない部分がまとわりつくのだろうけれど、
分かりづらいと敬遠されたり、本を手に取ってもらえないのは残念なことで
活字文化の衰退に繋がる。自分の中で「分かりやすい」を基準にしたくはない。
「分かりやすい」ということは、自分の枠にはまった価値基準しか認めないことだ。
自分の知っている国・言葉・語彙・文化しか認めないことだと思う。
自分とは異質なものは受け付けないのではなく、知る愉しみ、好奇心を忘れずにいたい。
小説はただのエンターテイメントではないのだから、
そんな私の常識を覆してくれる本に出会うと心がわき立つ。
タブッキ、人それぞれ意見はあると思うけど、私は面白いと思った。
想像を掻き立てられる小説だと思う。
『夢の中の夢』は芸術家や小説家たちが夜、眠りについて見た夢を書いたものであるが、
それが仮説だろうと作り話だろうと、小説だから出来ることがあると思う。
幻想的な小説だった。
作家の思想にふれて、とてもいい日曜だったな。
by erikok0826
| 2015-10-04 16:49
| 出来事/ひとりごと